2.
なんだあれは。
あの肩に乗せたあの筒は何だ?
バズーカに見える。多分、バズーカだ。
十中八九、というよりも、バズーカ以外にああいう形状の物はおそらく無い。
思いも寄らぬ武器の登場に、ブチャラティが呆気に取られていると。
「おい!」
めざとい男は、物陰のブチャラティを見つけていた。
「そこのおかっぱ! 援護しろ!」
「……オレのことか?」
目が合った以上、自分のことだろうとは思うが。
確認しようと呟いたが、既に男は敵の中に走り込んでいる。
しかも。
「……撃った」
バズーカを。
こんなところで。
バズーカを撃って走る男に、これ以上何の援護が必要なのだろう。
だが律儀なブチャラティは、「援護しろ」と言われた以上、何もしないわけにもいかず。
それに、本来ならば、ああやって敵に突進して行くのは自分だったはずだ。
ほんの一瞬考え込んだせいで遅れを取ったが、これ以上後手に回るのはプライドが許さない。
「あんなケバい男に負けていられるか……!」
両手に銃を構え、ブチャラティもコンテナの陰から飛び出した。
無茶苦茶な男の登場で毒気を完全に抜かれた。だが、呆気に取られつつも、状況を見極める。
先程放った一発で、敵の半分は動けなくなったようだ。
だが所詮は半分。
彼等も丸腰ではない。
反撃の体制は整えられつつある。
ブチャラティの目は、まず、武器を最初に手にしようとした男に固定される。
その利き腕に狙いを定めた。
と同時に。
また爆発音。
「……は?」
ちらりと視線を転じれば。
バズーカの派手な男が、二発目を発射していた。更に次の為に弾を込めている。
再び狙っていた敵に目をやれば。
「………」
右腕を吹き飛ばされ、膝をつく男が目に入る。
同じ人間を狙っていたらしい。
やはり他人と合わせるのは難しい。相手の考えていることがわからない以上、何処をどう援護していいものやら。
「おかっぱ!」
ブチャラティと同じようなことを考えていたのか、バズーカの男が叫んだ。
顔は正面に向けたままだったが、ブチャラティに話しかけているのは間違いないだろう。
しかし。
派手な男の言い分はおかしかった。
「オレの弾道を読んで動け! オレが撃ったんじゃないかって思う方とは反対側を狙え!」
なんだ、それは。
「バズーカの弾道なんか読めるわけがないだろう!」
思わず叫び返していた。
「じゃあオレは左! おまえは右! 半分からこっちがオレ! そっち側がおまえ! 決まりだ!」
「右と……左? 半分からそっち……?」
敵は偶数ではないし、真ん中で半分ずつに分けられるように整列しているわけでもない。どこを基準に半分と言ったのか。
なんだか、妙な男だ。
いや、バズーカ担いで単身乗り込んで来るような男がまともなはずがないのだ。考えを改めるべきだろう。
「右側か」
とりあえず、こちら側にいて動きを止める必要のある敵。
狙いを定めた瞬間。
またしても。
爆発音。
「………」
案の定。
ブチャラティが狙っていた敵は倒れ、ぴくりとも動かない。
あれは誰が見ても、右端に立っていた敵だ。中間ならば、左右どちらともつかないので互いに被ることもあるだろうが。
あの敵は、間違いなく誰よりも端に立っていた。
バズーカの男が手出ししないはずの、右側の端に。
「おかっぱ! 何してんだ! 援護の仕方も知らねぇのか!」
滅多なことでは動揺したりしないつもりのブチャラティは、だが内心思った。
貴様のような男をどう援護すればいいのか、オレは知らない。
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