いつか見た夢の在り処を探しに行こう
いつからこんな力が使えたのか、自分でも知らない。
いつだったか、デカイだけの間抜け面に言い様にあしらわれかけた時、突然自分の背後のそいつはいた。
そして砂が舞い上がり、デカイ犬は苦しんで転げ回った。
以来、どんな犬も、自分を恐れるようになり、そして従った。
そんな生活が当たり前で、勿論満足しているつもりだった。
それでも時々、無性に「何かが違う」と感じていた。
こんな退屈な生活で、本当にいいのか、と自問自答する。
そこいらの馬鹿犬には、こんな苦悩はわからないんだろう。
尻尾を振って、ただ後ろを着いて来るだけの犬じゃあな。
でも。
だからって。
こんなのはないだろう?
こんなことになるなら、ニューヨークで馬鹿犬のトップに立ってた方がずっとましだった。
あんな馬鹿な連中相手に、ちょっと物足りない気持ちになってたって、今より何百倍もましだった。
なんでこんなことになったんだ?
ヘリコプターに乗せられ、着いた先はとんでもなく暑い国。
そこらの馬鹿犬と一緒にされちゃ困る。
すぐに状況は把握した。
この、訳の分からない人間共と一緒に、四六時中誰かにつけ狙われる生活をしろってことだ。
しかも一緒に戦えってことだ。
少し一緒にいてわかった。
こいつらには目的地があって、そこにはもうすぐ着く。
そこで一戦交えたら、お役御免。帰ってもいい。
それまでの辛抱。
だったら我慢してやる。
ガムもあることだしな。
スタンドのお陰で、人間共の話してる内容はだいたいわかる。
奴らがスタンドを出してる時には、それがちゃんと伝わるからだ。
そうは言っても、あの最初の砂漠以来、出番がない。
だから適当に昼寝をして暇を潰す。
無理矢理連れて来られたんだ、これくらいの権利はあって当たり前。
眠っている時が一番いい。
都合の良い夢が見られる。
また、あの馬鹿犬どもと一緒にいる夢。可愛い奥さんを貰う夢。
時には、まったく違うけれど、それなりに楽しい夢。
このままジョースターのジジイの家の飼い犬になって、贅沢三昧で一生を終える夢。
まだ行ったことはないけれど、日本でのんびりと、承太郎と遊んだり、花京院に散歩に連れ出してもらう夢。
こいつらの家だったら、行ってもいいかな。
飼われてもいい。
首輪だけは勘弁だけど、そういうのも悪くないって思う。
目覚めるとまた車の中。
うんざりするくらい揺れる道。
ゆっくり昼寝もできないのか、ここは。
いつになったら終わるんだ?
早く終わらせてくれ。
そして帰らせてくれ。
何処に帰るのか聞かれても、多分、うまい答えはできない。
あの馬鹿犬どものところか?
あいつらはまだ、このボスのことを覚えているんだろうか。
何処でもいい。
ジョースターの家でもいい。
承太郎の家でもいい。
ポルナレフの家でもいい。
楽しく平和に、幸せに暮らせるんだったら、どこだっていい。
でも。
ここのところ毎日見る、あの夢。
あんな幸せな気持ちになれる所がこの世のどこかにあるんだったら。
できればそこに行きたい。
全部終わったら、そこに行きたい。
そこで贅沢に、幸福に、余生を送るんだ。
そんな所に、行きたい。
それでも嫌な予感がずっとつきまとう。
こいつらは本当に、全員生きて帰れるのか?
本当に、こいつらの家に行けるのか?
こっちはこれでも妥協して、こいつらの家でもいいって思ってるってのに、本当にそれが叶うのかどうかさえ、今はわからない。
何処でもいい。
幸せになれる、そんな夢の場所に行きたい。
微妙に長い15のお題 Menuページへ
Topへ